会社役員が負担する責任
近年では、会社の経営環境はグローバル化の進展など大きく変化しており、内部統制強化や経営の透明性が求められています。また、急速な景気の変化に伴い、経営環境の厳しさが増すなか、経営の舵取りはますます重要になってきています。
このような情勢のなか、会社役員を取り巻く訴訟リスクは避けがたいものとなっており、経営判断に関わる責任を追及する株主代表訴訟も
また、
役員を取り巻く環境が変化しており、役員に対する訴訟リスクは増しています!
- コーポレートガバナンスの強化
- 上場企業に対して、幅広いステークホルダー(株主、従業員、顧客、取引先、地域社会等)と適切に協働しつつ、実効的な経営戦略の下、中長期的な収益力の改善を図ることを求める行動原則(コーポレートガバナンス・コード)が2015年6月から適用されています。コーポレートガバナンス・コードでは、「株主の権利・平等性の確保」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」等の原則が策定されており、役員の皆さまに求められる責任はますます重大なものになっています。
- 訴訟の高額化
- 会社法上は、一定の条件を満たす場合を除き、役員の責任限度額は設けられていないため、役員が追及される損害賠償責任の範囲は、原則として会社役員の義務違反に起因して会社が実際に被った損害のすべてということになります。このため、株主代表訴訟などにおいて、被告役員が支払いを求められる損害賠償金は時として極めて高額なものとなり、実際に訴額が1兆円を超すような事案や、数百億円もの損害賠償を命じる判決も出現しています。
- 株主代表訴訟提起の
ハードルの低下 - 通常の訴訟の場合、訴額に対して裁判所に支払う手数料が決まってくるため、高額な賠償請求をする場合には、原告はそれ相応の手数料を裁判所に支払う必要がありますが、平成15年の商法改正により、株主代表訴訟においては、請求額の多寡にかかわらず、一律13,000円となっています。このため、原告となる株主にとっては、比較的容易に訴訟提起が可能であり、対象となった会社の株式を一株でも保有していれば原告適格を有することになります(ただし、6ヵ月以上の保有は必須)。
- 株主代表訴訟提起の
訴訟の実例
- 業種:銀行
- ニューヨーク支店の元嘱託行員が米国債の不正取引により発生させた損失の損害賠償請求
- 大阪地裁 平成12.9.20
取締役ニューヨーク支店長に5億3,000万ドル
取締役11名に2億4,500万ドル- 業種:メーカー
- 運営するドーナツ店で無認可添加物を含む肉まんを販売したことによる損失の損害賠償請求
- 最高裁 平成20.2.12
取締役2名に53億4,350万円
取締役10名・監査役1名に5億5,805万円~2億1,122万円- 業種:メーカー
- 恐喝による損害、同社株式買占めにかかる仕手グループの債務肩代わりによる損失の損害賠償請求
- 東京高裁 平成20.4.23
取締役5名に583億6,039万円
- 業種:メーカー
- デリバティブ取引による損失の損害賠償請求
- 東京高裁 平成20.5.21
取締役1名に67億540万円
- 業種:メーカー
- 有害物質を含む土壌埋戻材を不法廃棄し、撤去費用負担が発生したことに対する損害賠償請求
- 大阪地裁 平成24.6.29
取締役3名に85億8,400万円
-
参考:資料版商事法務No.416および各社リリース、報道等を基にMS&ADインターリスク総研作成より
このような訴訟リスクを懸念して積極的、独創的な経営判断がなされないこととなれば、貴社のさらなる発展や活性化が妨げられることにもなりかねません。
※上記はあくまで裁判例です。保険金の支払可否については、個別の事案ごとに約款・特約および法令に照らして判断します。
会社役員の経営にかかわる多くの大きな責任
- 会社に対する責任
- ・善管注意義務
- ・利益相反取引回避義務
- ・忠実義務
- ・監視・監督義務
- ・競業避止義務
- 第三者に対する責任
- ・一般の不法行為責任
- ・会社法上の特別責任
会社に対する責任
- 善管注意義務(会社法330条)
- 取締役として相当な程度の注意を尽くして業務を遂行しなければならない。
- 忠実義務(会社法355条)
- 取締役として法令、定款、株主総会決議を遵守して、会社のために忠実に業務を遂行しなければならない。
- 競業避止義務(会社法356条1項1号)
- 取締役が競業取引を行う場合には、事前に取締役会の承認を得なければならない。
- 利益相反取引回避義務(会社法356条1項2号・3号)
- 取締役が利益相反取引を行う場合には、事前に取締役会の承認を得なければならない。
- 監視・監督義務(会社法362条2項2号)
- 他の代表取締役または取締役の行為が法令、定款を遵守し、かつ適正になされていることを監視しなければならない。
- 責任が果たせない場合
- 株主代表訴訟・会社訴訟が提起される可能性
第三者に対する責任
- 一般の不法行為責任(民法709条)
- 故意または過失により他人の権利を侵害した者はその損害を賠償しなければならない。
- 会社法上の特別責任(会社法429条)
- 役員がその職務を行うにあたり悪意または重大な過失があった場合は、当該役員は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
- 責任が果たせない場合
- 第三者訴訟が提起される可能性
会社役員を取り巻く訴訟リスク
大きな取引案件について提訴されると、
また、役員の判断内容によっては
さらに、
役員に対する訴訟は主に次の3つに分類されます
- 株主代表訴訟
- 株主代表訴訟とは、会社役員が善管注意義務や忠実義務に違反し会社に損害を与えた場合に、株主が会社に代わって会社法第847条等を根拠として役員に対して損害賠償を求める訴えを提起するものです。
- 会社訴訟
- 会社訴訟とは、会社役員が善管注意義務や忠実義務に違反し会社に損害を与えた場合に、会社が会社法第会社訴訟423条を根拠として損害賠償を求める訴えを提起するものです。
- 第三者訴訟
- 第三者訴訟とは、会社役員が故意・重過失等によって第三者(取引先、株主等)に損害を与えた場合に、第三者が民法や会社法第429条等を根拠として損害賠償を求める訴えを提起するものです。
『会社役員賠償責任保険(D&O保険)』による備えが必要です!
事故が起こった場合の損害(損害賠償金・争訟費用)に
備えるのみならず、